2025年、一時的に1CHF=200円を付けた相場は、2026年に入り200円台の大台に乗り今もじわじわと上昇し続けている。
かつて「安全通貨」として並び称された日本円。その均衡が崩れた現実は、両国の産業構造、或いは実体経済の地力に生じた根本的格差を浮き彫りにしている。

国際決済銀行(BIS)が算出するREER(実質実効為替レート)において、日本円が過去最低水準に沈む一方で、スイスフランは主要国の中でも突出した堅調さを維持し続けている。この「強い通貨」を背景に、スイスは高い労働生産性によって、高物価、高賃金の循環を確立しており、為替がいかに変動しようとも実体経済が揺らぐことは極めて少ない、いや、ほぼない。

この地力の強さを表わしているのが、先般触れた「スイスホテル産業」である。 歴史的な超通貨高の逆風の中にあっても、スイスの伝統的な観光基盤には、中東系をはじめとする外部資本が長期的リスクヘッジ先として巨額投資を続けている。資本の論理は、目先の為替の損得ではない。投資対象の本質は、単に不動産ではなく通貨高を跳ね返す「スイス」の絶対的付加価値と、国家ガバナンスへの信頼そのものにほかならないのだろう。

スイスにおいて【観光業】とは、ただ外貨獲得の手段ではなく、国家の富や環境を次世代へ継承するための『ガバナンスの根幹』に据えている。その定義は「頭数の拡大」ではなく、厳格な管理の下で高単価・高品質を維持し、得られた利益を地域や人へと還流させる循環構造に集約されるのだ。環境と観光を高度に両立させる国家戦略【スイステナブル】の思想は、この揺るぎない土台から生まれているといっても過言ではないだろう。

通貨高が進もうとも世界の富裕層や資本を惹きつけ続けるこの強靭な構造を前にしたとき、はじめて、現在の日本のインバウンド市場が抱える本質的な脆さが炙り出されてくる。
現在の日本の観光施策は、「円安という追い風」への依存度が高く、「国際的な割安感」を長期的なヴィジョンを欠いたまま消費している危うさを孕んでいる。サービスや付加価値そのものが基準引き上げ状態ではないため、現在のインバウンドの活況は、実質的には「通貨の購買力格差」がもたらした一時的な非対称性に過ぎないとも言われ、為替が反転するか、あるいは次の予測不能な外部ショックが来れば、この一時の賑わいは瞬時に霧散しかねないリスクを内包している。
さらに深刻なのは、この割安感の消費が国内の観光基盤そのものを歪ませ始めている点だ。観光客の集中による生活インフラの逼迫が加速する一方で、そこで得られた富が地域や現場の労働者へ十分に還元されず、結果として地元住民が自国の本来あるサービスから締め出されるという、経済的、社会的断絶まで顕在化しつつある。明確なグランドデザインを持たない「数の追求」を続けることは(政府は数から質へ転換と先日リリースしたが)、国内の観光資源をただ消費するだけに終わりかねない。それは同時に、国の主要産業の命運を、為替市場の激しいVolatilityの波にそのまま晒すことを意味してはいないだろうか。

最後に、
2020年から数年間にわたるコロナ禍、都会からも観光地からも一瞬にして人が消え去る不可抗力な事態を、現場の最前線で経験した筆者の感想として、いま政府が掲げる『質への転換』その方針そのものは、進むべき針路であると大いに賛同する。しかし、真に問われているのは理念の美しさではなく、それを地域や現場の仕組みへと落とし込む「具体的な実行力」ではないだろうか。為替の恩恵を消費して終わらせるのか、それとも強固なガバナンスのもとで観光消費を原資に変えて、国内産業全体の付加価値水準を引き上げる契機とするのか。今が、正念場。

(私的な思い)
と。。。。為替から紐解く深層を連ねてみたが、このスイスフラン高は、個人的にかなりきつい・・・
昨年の今頃ですら、180円を境に右往左往であったのが、今や大台突破。カード利用となると更にコミッション上乗せで230~240円?
1CHF=80~90円、高くとも100円の頃にスイス在であった私には現在はもはや異次元ワールド。
ミネラルウォーター=40円 ⇒ 350円 どす。

地元産小麦で作られたブレッドには、地元で作られるバター。」アルプスハーブを練り込み提供される。
地元小麦農家さん、酪農家さん、乳製品加工場、そしてホテルキッチンメンバーのサイクル
地域で富を還流するデザインは、最高級ブランドバターを遥かに凌ぐブランドバリューを創出している。
地域循環経済の在り方が【bread&butter】からもジワリとにじみ出る。
@ Six Senses Crans Montana