コロナパンデミックにより需要低迷した観光業の賦活を目途に据え、【スイステナブル】はキックオフされた。その主意は【短期的戦略】に置かれている。スイス政府観光局が主幹となり急性期の回復に尽力し『現場実装のためのブランド戦略』を軸においている。一方、スイステナブル2030は、スイス連邦経済省(SECO)主導による【国家レベルの政策ロードマップ】であり、両者はレイヤーの異なる概念としています。
が、しかし、これら2つの政策は相互に補完し合う関係にあり、ビジネス・経営の観点からは、
その役割の違いを正しく理解し把握することが大変重要になってきます。

【1】Swisstainable:顧客と事業者と結ぶ『実行プログラム』
先述のとおり、スイス政府観光局が主導する具体的かつ対外的な『ブランド戦略』です。その主眼は抽象的なサステナビリテイという概念を、顧客が識別可能な『ラベル』へと変換することにあり、事業者が三段階レベル認証(Committed, Engaged, Leading) に応じて参加できる仕組みを整え、現場レベルでの行動変容を促す実務的なツールとして顕著であるのが特徴です。ホスピタリテイ事業者が自社の取り組みを可視化し、付加価値(ホスピタリテイ資本)として提示するためのいわば【現場の武器】とも言えます。

【2】スイス観光サステナビリテイ2030:スイス国家が抱く【包括的ガバナンス】
一方で、2030戦略は、スイス連邦経済省(SECO)が策定した観光全体を俯瞰する長期ロードマップです。これはスイステナブルよりも上位の概念であり、観光局だけではなく、連邦政府の各省庁。自治体、交通インフラ、農業など、国家全体のセクターを横断するガバナンスを提議しています。

Swisstainable が『いかに売るか、いかに変えるか』と言う実行フェーズを担うのに対し、2030戦略は『観光を通じていかにスイスの持続可能性と競争力を担保するか』という、マクロな投資判断や法規制、インフラ整備の方向性を示す羅針盤としての役割をはたしています。

【3】両者の論理的接点とシナジー
2030が掲げる『リジェネㇻテイブ』な社会の構築という、やや抽象的なビジョンをスイステナブルがスコアリングや認証制度に 落とし込む事で、事業者は迷いなく【ホスピタリテイ資産】の強化に注力できるようになります。この階層構造があるからこそ、スイスの観光戦略は単なるプロモーションでに終わらず、国家としての整合性と事業者単位の収益性を両立できているのです。

昨年末の講演でも触れた『ホスピタリテイ資本経営』で見れば、2030戦略は資本を守るためのルールであり、スイステナブルは資本を増強させるための【手法】であるとも言い換えられるのではないでしょうか。