日本を代表する歴史的資産ホテルのひとつ、川奈ホテルに邂逅
『日本クラシックホテルの会』創設草創期メンバーのアルムナイの集い。私個人としては3回目の機会でもある。
ホテル業界外の友人知人等には、最も身近にある『クラシックホテル』でもあるようだ。
なにしろ壮麗なホテルと共に国内屈指のゴルフ場を併設しているのは大きい。主企業のゴルフ接待には最良地でもあろう。
風光明媚な景観、史実に彩られたホテルと遊興の場。加えて都心からの移動もさして距離を感じさせない立地。
『毎年、川奈ホテル泊、翌朝ゴルフトーナメントだったよ』
『こちらのホテルで展示会と宿泊のパッケージ(インセンテイブ)行ったのよ』
など、友人らに限らず前職在職時には関東エリア居住のお客様より『川奈ホテル』の名を聞くこと少なくなかった。
雄大な海に面し潮風に吹かれ波音を聞きながらの”日の出日の入り”もまた格別なリゾートライフ。
至高の館の中で、エレガンス溢れる極上の刻を愛でるに相応しいヒストリックホテルである。

時代は明治、英国留学中の大倉喜七郎は、貴族等に愛顧され利用されていたゴルフ場、テニス場、乗馬クラブやプール施設などを完備したスコットランドのリゾートホテル、『グレインイーグルス・ホテル』に滞在。その高貴で雅な佇まいに大きな感銘を受けた。留学を終えて帰国ののち、大倉財閥の別荘として建てられたのがここ『川奈ホテル』の始まりである。
ホテル紋章(社章ではなく紋章=エンブレム)に鷲が象られているのは、創始者大倉喜七郎のグレインイーグルス・ホテルへの想い、羨望、在りたい目標がこめられている旨を、支配人の高木さんは話してくれた。欧州の保養地(リゾート)グランドホテルに在るすべてがここ川奈ホテルにも在るのだ。また、”創始者(創立者)”の熱い思いが始まりとなるところにヒストリックホテルの魂は宿っているように思う。自分(自社)の別荘としての始まりか、企業もしくは政策のひとつとしての開始かで、現代においてもその色彩は変わってくる。施策はいわば不動産事業に類似性をもつ。が、他方、別荘が起点には『Life』が支柱にあるように思える。
広々としたラウンジロビーからは太平洋を一望、高い天井、太い梁と柱に代表される建築は往時の栄華とともに、奇をてらうことのない『寛ぎ』の空間となっている。静謐な空間の中でゆったりとソファに座して思わず読書に耽ってしまった。
中庭の回廊もまた中世の修道院を彷彿させる直線と曲線、荘厳なロビー、ラウンジ、バーとはまた異趣な厳かさを感じさせる。
総ガラス張りのサンパーラーで、東から昇る太陽を眺めながらゴルフのお客様と暫し歓談に興じる。こんな旅先での語らいも連綿と紡がれてきたホテル時間の中へと嫋やかに溶け込んでいく。

『ホテルは人に育てられ』とも言われるが、歴代来館された著名人をはじめとした写真の数々、
それらを見ながら、一国の王であれ、大統領であれ、等しくこの光景の中に在り、ホテルの歴史に足跡をのこされており、
ホテリエもまた、その同じ空間の中に共に在る思いでをそれぞれの胸の内に刻まれ育てられてゆく。
国内に限らず、欧州に於いても歴史的グランドホテルを訪問すると必ずと言ってよいくらいに、著名人来訪写真が掲げてある。
半日かけてたどり着くロケーションのリゾートであれ、グランドホテルと称される所には歴史に彩られた足跡と伝承があるのだ。
そしてそれらは人間力が源ではないのか、そう感じるに尽きない。

敷地内にある田舎家ですき焼き懐石のお夕食後、ホテルの名所たる名所BARで乾杯
和やかなひと時を過ごし、翌朝早いゴルフに備える。8時14分スタートは早いうちに入らないらしいが、朝弱い私には早朝の部類だ。
それぞれ客室へ戻る。 総客室数100室。 88年の歴史を誇るホテルであるも、客室内は現代ニーズに則しフルリノベーションが施されている。継ぎ接ぎ補修保善ではなく、この時代に必要なもの(ゲストニーズ)視点で改装されている。アサインされたお部屋は、アールコーブにも広さを持たせ閉塞感を払拭している。シンプルな全身鏡はゴルフ、はたまた夜会出席時には必須アイテムだ。靴まで映る全身鏡であること、ここが重要。クロークは引き戸で纏められ進行の妨げを回避。浴室扉で仕切られたバスルームは洗面とは別。LED照明を設置した室内灯り、アールコーブ灯、ベッド灯など細やかに調整可能となっている。室内は居住スペースでもあるので明度はとても大切はゲスト視点サーヴィスである。雰囲気重視かゲスト視点重視かの分岐点であろう。今の時代、BS対応は当然のこと英語のみならず多言語放送を備えたTVも必要となる。TVを見る見ないはお客様が決めること、ホテルはゲストニーズに先見で応える、そこがホスピタリテイでもある。デユべ含め客室係の方の丁寧な仕事ぶりが垣間見えるほどに清潔感漂っていた。
客室内だけ見れば、都心のフルサーヴィスホテル仕様と何ら変わりはない。シンプルかつ機能性に優れている。華美ではないがデザイン性に富み、ファブリックのカラーとフォルムなどトータルプロデュースの美学が光っていた。

パブリックエリアにある『悠久なる風格』と、居住スペースにある『現代ニーズ』
川奈ホテルの取り組みが見て取れる一面である。”変えていくもの、守りゆくもの、その叡智”
大倉喜七郎が英国で触れたリゾートの本質、それを時代に合わせて体現化していくことは言うほどに易くない。
その工程に弛みない務めを果たしているのかと、名物のフルーツケーキをいただきながら感銘を受ける。

朝食、オーダーしたオムレツには川奈ホテル紋章の焼印が施され、+αのブランデイングを見た。誇りとも言えよう。
ん?? 前回とはまた一歩進化中?

朝食後、川奈ゴルフ大島コース を初めて踏みしめる。
云十年振りにハンドルを握る(カートですが。。。。)初めて、コロコロとゴルフボールと戯れる。
絶好のお天気の中、絶景の光景と自然とともに心寄せあう皆さまとゴルフに興じれるなど最高。
この時を機に、嵌り始めた私は速攻でウエアを揃えた。スーパーミニスカート(笑)
18ホールラウンドのあと、お愉しみの”磯ラーメン” 干しエビ辛み味噌と中華そばスープの溶け合う妙。トロトロ叉焼
これを食べるだけでコースに出る、と本末転倒な思いにもなる、そんな美味し拉麺。

リゾートホテルとは? 歴史資産ホテルとは?
紐解く醍醐味と研究テーマがここには潜在してる。
『執筆に1週間ほど籠ってもいい??』
そんな熱い高まりがふっと口をつく、川奈ホテル時間