2025年度、スイスの外国人宿泊者数は2,280万泊という過去最高を記録した。この数字の裏側にあるのは単なる景気回復ではない。2008年から段階的に進化を遂げてきた国家戦略『NRP(新地域政策)』による、地域経済の構造改革が光明をさしている。
NRPの本質は、『補助金』から『投資レバレッジ』への転換にある。
連邦政府が投じる1CHFの公的資金に対し、州や民間から引き出される投資額は平均4.5CHF。 政府は全額支援を行わず、事業の『収益性』と『持続可能性』を審査し、民間のリスクを補完する『呼び水』に徹している。 この1:4.5という投資効率こそが、スイスの地域経済を筋肉質に変えた根幹である。
このスキームがもたらした最大の成果は、観光の『通年化』である。 かつてスキーシーズンに依存していた山岳地帯は、NRPの支援により『アルパイン・サマー』の再定義を確立。 2025年の夏季宿泊者数が冬季を凌駕する伸展を見せたのは、持続可能な戦略【Swisstainable】を基軸に、高付加価値な滞在を求める層を射止めた結果でもある。
また、NRPは地域内の事業者を結ぶ『接着剤』として機能している。イタリア語圏の『100%Valposchiavo』のように、農業、ホテル、レストランを一つのバリューチェーンとして統合。 食材の90%以上を地域内で循環させる仕組みを構築したことで、地域外へ流出していたコストが所得として積み上がる構造へと転換された。
特筆すべきは、ハード(施設)よりもソフト(経営ガバナンス)への投資、ということだ。2025年度、NRPは地方の小規模ホテルに対して、デジタル化やサステナビリテイ経営のプロフェッショナル・コーチングを重点的に実施した。 フラン高という逆風下でも、顧客に『価格以上の価値』をかんじさせるのは、こうした目には見えない『ホスピタリテイ資本』の積み上げがあるからだ。
日本の地方創生に必要なのは、一過性のイヴェントではなく、地域の100年企業や産業機関が連携してグローバルな市場競争力を担保するための『投資スキーム』の確立ではないだろうか。 スイスのNRPは、地域が自立して誇り高く稼ぎ続けるための、極めて合理主義に基づく洗練された処方箋と考える。

『シロップ』たんぽぽ、レモングラス、ラベンダー、サルビアなどこの地で獲れる植物のエッセンスを用いて、
『ここでしか』のブランドを創りあげている。手にとり易い価格帯としているのもマーケテイング感覚に優れた人材が居る証左

食堂もエリアのおばちゃん(失礼)手作りの食事。
様々な国から集ったゲストとホテルのスタッフさん等との交流は消え去ることなき美しい想い出
