敢えて、【人財】とおく。
『材』と『財』は異なる。前者は業務知識・能力は有するものの代替可能な人、一方で後者は、それらを有し会社(この場合、ホテルホスピタリテイ業界)に財をもたらすかけがえのない人を示唆する。いずれも欠かすことはできないが、後者を増やして行く事が引いては会社(業界)の成長に繋がるのではないか。 だが、言うのは易し。実際のところ、これがなかなかに難しい。ビジネスマネジメントの中でも難課題の上位に入るのではないか、そう思えるほどに複雑だ。
採用、教育研修などの人財開発活動のみで開花するものでもない。例え、その機会を用意しても『指示だから』『箔付け』など受動的要素が強いと伸びしろは狭くなる。『自主性』『自発性』『邪心のない向上心』いかに能動的に取り組めるかによるからだ。
ホテル・ホスピタリテイ業界は、接遇接客業である前に『人間業』、と、私は考えている。
各社カラー、入社後に体得するもの/こと以前に、ホスピタリテイ業に携わる『人として』の基礎力があるか否か。
【挨拶ができること】
これ、『当り前でしょ!』と思われると考えるが、意外にもここが崩れている場面に遭遇する。
”おはようございます””ありがとうございます””申し訳ございません”など、ヴァ―ヴァルコミュニケーションを苦手とする若年層が増えている。(年配者にも居るには居るが概ね気位が高いスノビッシュに多い)
【基本修得ができていること】
殊更に、先を急ぐ傾向が強いのか【基本】を飛ばしたり曖昧にしたまま現場に出る。または出される。何事も基本があってこその応用力。汎用性の高い応用力は基本がしっかり身についていれば、自身の中で多様なケースを想定もできていく。そこに『先輩に相談する』はケースのひとつであろう。だが、近年は何かとすぐに解決策のみを聴きに駆けつけるケースが散見される。それも時を経ずして同じ事を何度も尋ねてくる。基本軸が揺らいでいる証左ではないだろうか。
【現場感を体得すること】
大学全入時代の負の遺産かもしれない。GM時代、採用時に【大卒】【専門卒】【高卒】と区別採用した。結果的に、【専門卒】【高卒】の社員が【大卒】社員よりも、スキルを含め伸びを望める成長を遂げていた。(自社分析によるもの)。これも悪しき習慣と顧みて撤廃したが、大卒者とそれ以外の採用者とは門戸から異なる配属にすること。大卒者本人等もバックヤード系仕事を望み応募してくる。『ホテルエになりたい』ではなく、『企画開発』『PR』をするためにホテルを志望した、と来る。それはそれで『自身のやりたい事』が明白で褒められること。だが、彼らは現場研修に入るやいなや、早々と不平不満を呟きだし挙句には転職活動の準備に入る。こちらがとてもやるせない気持ちになった。【ホテル/ホスピタリテイ業界の生業は『コンピューター』に向き合うことじゃないんだよね。『人』と向き合う仕事なんだよな。】 現場感覚を得られることは、その後に企画開発広報、経理もおなじ、バックヤード職務に就いたとき大きな財産となる。そして、それが【人財】となっていくのだ。
今回のスイスホスピタリテイ視察では、3件のホテル関係者(オーナー社長、総支配人、ホテル支配人)等と会談した。
3者ともに共通していたことに『人材難』の話が挙がったこと。そう、人財難は何も日本に限った事ではない。ホスピタリテイ先進国のスイスでさえ、その職業に就く人は年々縮小。もはや壊滅的な状況でもあり外国人スタッフに依存するところも多いとあった。
スイスは優れたホテル学校が数あることでも知られているが、その卒業生さえもホテルを職場にすることが減少していること。理由としては、低賃金、不規則な労働時間、過重労働、そもそも人付き合いが嫌(これ、意味が理解できないが。。。)
ほぼ、日本で新卒者採用における離職理由と酷似している。スイスホテルスクール=日本の大卒と同等であることを考えれば頷くこと然り。ただ、ここからが少し異なるのは、そもそも上述理由の卒業生は『ホテル/ホスピタリテイ業界』を選択しない。自ら選択して門戸をたたいた者は、ある種の覚悟をもって臨んでいる事だ。実際に、その類の離職率は低い。キャリアアップの転職はあっても、他業種へ移行などの離職は少ない。
そしてまた、彼らも入口は『現場』だ。いきなり営業だの企画だのに配属はされない。今回であったスイス人男性は朝シフト、夜シフトなど不規則勤務で料飲サーヴィス業務に就いていた。会話をし、所作をみるだけで、地頭の良さと基本が出来ていることは明白であった。ゆえに、少し不愉快な場面に遭遇した私に対して、最上の心配りをくれた。心配りをするには目配り気配りが必要。彼は大局を見て、咄嗟に自己判断で対応してくれたのかと思う。揺るがない基本が対応力に繋がる一場面であった。5つ星ラグジュアリーホテルでの出来事である。
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