皆さんは海外渡航先にて常にパスポートなど身分を証明する公的証書を持ち歩いていますか?

昨年12月のスイス滞在時、何十年振りかで「日本政府発行パスポート」の凄みと有難みを身に沁みました。
パスポート以前に「日本人」であることが、ある種の信用性を持たれる事に改めて知る機会でもありました。

バーゼル滞在3日目、お天気もスカッと晴れ渡り太陽が顔を覗かせる長閑な日、
「懐かしのあのモールへ行ってみるか!」と、スイスからドイツへと国境をまたぐトラムになりました。
かつてバーゼルに暮らした私。第一期バーゼル時代は今から四半世紀以上も前になる。
EU通貨統合になる以前で、当然の如く自宅には各国の通過を用意していました。ドイツマルク、オーストリアシリング、イタリアリラ、フランスフランなど。通過の違いは国境を強く感じさせることでもあり、現に国境を越える時、或いは帰国するときの検査は相当に厳しいものでありました。ドイツラインフェルデンとの国境の街、スイスラインフェルデンに暮らした我が家はドイツへの買い出しは日常的であり、当時は父が運転する車で週一のショッピングに出かけていました。
お買い物のみならず、食事へ出かける際も全員がパスポート携帯して出かける、それが当たり前になっていました。
時を経てEU通貨となって以降、国境検閲の緩和が一足飛びに進み場所によっては検閲官すら居ない。フリーパスとなっています。

そんな環境に慣れてしまっていた私。
迂闊にもパスポートを持たずしてトラム乗車。ウキウキ状態でライン川を渡ったところで最前列ワゴンから聴こえる警告!
「Ausweis, bitte!!」そうです、忘れかけていた検閲が始まったのです。3人の検閲官がトラムに乗り込み一人一人チェックしていく。
無賃乗車チェックではない、身分証明のチェックだ。声が近づいてくるに従い、心臓の鼓動は高鳴る。何かしでかした、わけではない。パスポート不携帯という自己ケアレスミスだ。まさか自分の乗ったトラムが検閲対象になるとは。。。。ちょっと不運と思ったのも嘘ではない。ついに私のところ。狼狽えても仕方がないので正直に話しをしました。
「パスポートはホテルのセーフテイーBOXに入れたまま忘れてきました」
「何か他に写真付きで証明証できるものはないですか?」
「運転免許証ならあります。。。
徐に手渡したのは「日本の運転免許証」!!
国際運転免許証ではないので英語表記はまったく無い。それでも、これしか持っていない私には頼みの綱。
暫く写真と私を照合された後、
「次回からはちゃんと携帯してくださいね」
「分かりました。ありがとうございます。」

懐かしのショッピングモールには辿り着いたが、もはや買い物を楽しむ気持ちにもなれない。
一刻も早くスイスへ戻りたい。。。。と先走る気持ちは、想い出のピザ屋さんの香りまで遠ざけてしまう。

海外は日本国内と違うこと。自分が何者であるのかを証明するものを携帯すること。
そして、「日本」という国が「信頼と信用」を堅持されていること、この小さな出来事から知りました。
信頼と信用は1日では築けない。先人の方々が歩まれた道程にふっと思いが帰った。