ロッシーニ作「セビリアの理髪師」@Theater Basel (バーゼル劇場)

同日の午前から午後、バーゼル美術館にて『マテイス展』を鑑賞後、ひとときのブレイクを挟み、
バーゼル滞在の目的のひとつ、オペラ鑑賞へ出かけた。
一昨日のヴェルディ作「リゴレット」千穐楽、悪天候により断念した分、このセビーチャへの思いは一層に高まるものであった。初日公演を鑑賞するのは時として賭けにも匹敵する。概ね演劇は回を重ねるごとに成熟され、ソリスト間の呼吸はもちろん、オーケストラとの調和も麗しくは開花していく。
とは言え、初日には初日の醍醐味があり、舞台にに臨むアーテイスト皆さまの意気込みとともに、「初」にある緊張感、期待感、高揚感など、人間の悲喜交々を直球で受け取ることが叶うのだ。

19:00開場、19:30公演開始。
国内外問わず、オペラ、ミュージカル、コンサートなどには時間が許す限り出かけている。
音楽が好きと言う事もあるが、人から生みだされる芸術の高みをリアルに感じ、それが生きる力にも呼応する瞬間が何とも心地よいのだ。
バーゼルのこの時に、新たな発見をした。
19:00~およそ20分間ほど、ホワイエ前のロビーに設えられた場所で、同舞台関係者(劇場担当者)より、「セビリアの理髪師」のあらすじ、本公演を至るあらましなど本編へのワクワク感を更に高めるプレゼンが催行された。わたくしが知らないだけかも知れないが、日本国内でこのようなプレゼンってあるのかな? Baselですのでオールドイツ語でのプレゼンではある。ローカルに根ざしているがゆえに当り前のことだが、このドイツ語(正確にはスイスドイツ語)プレゼンは、ツーリストの私にはお土産付のような特別感に包まれていった。言語はリズムということ、習得には慣れが肝心、それらを見事に思い出させてくれた。最初、???でも、徐々にそのリズム感に乗って言葉が伝言のように脳内を駆け巡る。そして、プレゼン終了時にはお隣になった殿方とちょっとした会話も楽しめるようになっている。
この試みは、地元からの観客のみならず旅行者にとってもある種「特別な体験」として心に残ることだろう。劇場経営運営も、日本でいう独法化により『顧客感動度』に反映する戦略を戦術としている。
ハード面の充実を図る一方で、「芸術」が放つ人との繋がりを強化しファン作りに精励されているのは、今後がますます楽しみになってくる。1幕後のパウゼ(休憩)、ホワイエではワイン、季節柄グリューワインなど片手に、隣席ご縁が拡がり賑やかで朗らかな時が紡がれている。

幸運にもわたくしは5列目どセンター席で観劇。バーゼル交響楽団による20名編成の小オケは、
このオペラの魅力を更に引き出す「管」メインの編成だ。フルート、オーボエ、ホルン、クラリネット、ファゴットなど。はち切れんばかりの元気な音から重低音のアダルト感満載な音まで、その彩は舞台に花を添えていた。チェンバロ奏者兼指揮という見慣れない構成も興味深く、オケピットでもなく、舞台後方に設えるでもなく舞台上3分の1に陣を構え、演者たちと同視線で観客を湧かす。
時折、ソリストたちがオケに絡んでいくのも、他にはない演出法だな。

フッと横を見ると、高校生10数名が引率の先生と共に席に着いていた。いまどきの15歳、16歳。
着飾った観客で埋め尽くされた会場の一角は、これも特別な空気感を放っていた。
が、人は見た目ではない。自分を纏うもので判断できるものでもない。彼らが超ロングなオペラに親しむことそのものが貴いと感じた。その機会を創っている大人の方々にも乾杯!
若者の未来、何がきっかけとなり歩む道の礎になるか分かりはしない。このオペラから何かを感じて音楽の道を志す人もあれば、やはり他の事に興味があると自認する機会にもなる。
取捨選択をするには、挑戦の機会、日常に体験がより多くあることが選択に先んじて大切かと考える。

なんだか、セビリヤの理髪師の話よりも【オペラ】を含む芸術との関わり論になってしまった(笑)

あらすじは、超長い演目をかいつまんで記しますと、

ジョアキーノ・ロッシー二作、わずか16日間で作曲仕上げたと言われている。
1816年、ローマにて初演。
1782年、パイジェッロにて同名オペラ公演を催行するも、ロッシーニ版で世に知られる事となる。

アルマヴィーヴァ伯爵(テノール)は、ロジーナ(ソプラノ)に恋をしている。
遺産目当てだの、横やりだの色々と至難ありながら、伯爵はフィガロ(理髪師、バリトン)の助けを受けて、伯爵とロジーナは結婚する。

3行に端折りました(笑)

2024年は、ジャコモ・プッチーニ没後100年メモリアルイヤー、
イタリア歌劇が魅せてくれる「人生謳歌」「人生賛歌」を共感してみませんか?




セビリアの理髪師初日公演。待ちわびた観衆で賑やかなクリスマスシーズンを彩っている。
劇場への階段。一段昇るごとに期待感は高まります。